FEATURE 特集

1,300年受け継がれている「美濃和紙」。
伝統を守りながらも挑戦を続ける、職人たちをご紹介します。

手造らんたんや 加納 英香さん

美濃で漉かれた和紙と提灯職人の技術

Episode1

美濃和紙を活かした提灯。

漉きむらが無く良質な美濃和紙。美濃和紙が江戸時代、主に障子紙として使われた理由は、丈夫であること。そして光を通すと白さが増して美しいからです。あかりを通すことで一層際立つ美濃和紙の良さ。美濃で漉かれた和紙と提灯職人の技術が合わさり、温かな光を放つ提灯が生まれました。

両親は美濃市唯一の提灯屋を営んでおり、提灯造りを見て育った加納英香さん。
うだつが上がる町並みでひと際優しいあかりがこぼれる手造らんたんや。覗いてみると、大きいものから小さいものまで、加納さんが作った提灯が所狭しと並んでいます。

幼い頃の遊びはなんとも男勝り。手先が器用で、モデルガンや飛行機を組み立てたり、はんだごてで基盤に配線を繋げたり。
「男の子と話がよく合いましたね。回路図も読めますし、理科の電気抵抗の授業は、楽勝でしたよ」。
ゲーム機器の代わりに、電子工作キットを買ってきてくれる父。受け身で遊べるおもちゃは1つもありませんでした。
「なんか男の子のような感じで育てられた気がしますね」。
“ファミコン欲しかったな…”と言いつつも、子供の頃を懐かしんでいました。
はんだごてで遊んでいたなんて。驚きが隠せません。

 

 世界の文化・遺跡が大好き。小学生の頃に出会った『インディジョーンズ』と『シャーロックホームズ』の影響が大きい。
「旅行に行ってもショッピング街はどこも代り映えしない気がして…。外国の文化にふれると日本の良さを再発見できるんです」。
まさか提灯屋さんで遺跡の話が聞けるなんて! 思わずおすすめの遺跡に行きたくなりました。
提灯のデザインは、旅行や映画、お客さんとの会話からヒントを得ることが多く、休日はぼーっと空を見上げながらイメージを膨らませることも。
「誰も見たことが無い、新しい提灯を作りたいです」。
店内に並ぶのは、パンダやニワトリの顔が描かれた斬新な提灯。大きさが同じでも、ひごの巻き方を変えるだけも雰囲気が違ってくる。
「和紙がシンプルな分、デザインが生きてくるんです」。

Episode2

お客さんの声を届けるパイプ役。

 大学を卒業後は、美濃和紙の里会館で行われる紙漉き体験指導員として働いていました。今でも提灯に欠かせない和紙を漉く職人たちとは深い付き合いが。
 らんたんやでは、お客さんから“こんな和紙があったら面白いな”と、和紙に対する要望を聞くことができます。
「手漉き職人に直接お客さんの生の声を届けることができることが、らんたんやの良いところです」。
らんたんやは、手漉き和紙職人にとっても、お客さんにとっても無くてはならない存在です。
紅葉や原料の皮なでが入った和紙を使った提灯。和紙自体の種類が豊富で、1つ1つじっくり見てしまいます。
「私は和紙を使う立場だからこそ、手触りと匂いで誰が漉いた和紙か分かりますよ」。
和紙ににおいがあるなんて。それだけたくさんの和紙を見てきた証拠です。

良質な竹と和紙の産地だった美濃の国。竹と和紙を使った提灯と和傘が生まれた。
提灯には祭礼用・看板装飾・ランプシェード・創作などがある。
提灯には張り型とコマという道具が必要不可欠。張り型にひごを螺旋状に巻き付け、丁寧に糊付けをし、和紙を1枚1枚貼る。
提灯に入れる文字・家紋は、墨や染料を使い提灯職人の手で描き入れる。
美濃の提灯は、1994年に始まった美濃和紙あかりアート展をきっかけにより人気を博した

Episode3

紙とは腐れ縁の仲。

 「まさか紙漉きと結婚するなんて思ってもいませんでしたよ」。
ご主人が漉いた和紙を使っている提灯もあります。
「結婚するとき、父に“この和紙を漉く人だから大丈夫”と太鼓判を押されました」。
ご主人が漉く和紙は、きっと手触りが良いに違いありません。
紙漉きの指導員として働いた後、トイレットペーパーの会社へ就職。そして提灯職人へ。なんと祖父の実家は紙漉き。さらに、両親は提灯屋。
「結局紙から離れられないんです。腐れ縁のようなものですよね」。
家族中、血では無く楮の繊維(こうぞ:和紙の原料)が流れているかもと大笑い。
これは腐れ縁どころではない!ご先祖も和紙に携わっていたかもと、思わざるを得ません。

 両親に提灯職人になると伝えると、返ってきたのは“ああ、そう”の一言。
そろそろ提灯造りに一区切りを付けて、のんびりしようと考えていたお二人。
「継いだ時の様子をよく聞かれますが、ぜんぜん感動的なエピソードは無くて…」「二人からは、“仕事辞めれへんやん!”と言われましたね」。
 そう言いながらも指導してくれた母。“考えるより身体で覚えなさい”と背中を押してくれる父。
お二人とも本当は、継いでくれることを嬉しく思っていたのだと感じました。
らんたんやにある道具のほとんどが両親から受け継いだもの。
張り型に使われている木は、特に年期が入っており、どの種類の木材か判別がつかないほど。
家族にとって、父が手作りした道具は提灯造りには欠かせません。

Episode4

喜んでくれた人・支えてくれた人がいたから。

 らんたんやを始めた時・落ち込んだ時は必ず周りの人が気にかけてくれました。
「困っていたら地域の人が必ず手を差し伸べてくれます。その恩を仇で返すわけにはいきませんからね」。
助けてくれる人たちと“飾ります”と言って使ってくれる人の声があるからこそ、ここまで続けてくることが出来ました。
誰でも必ずイライラすること、落ち込むこともある。
「あかりを見て、マイナスの気持ちがプラスになってくれたらいいなと思っています」。
 らんたんやから溢れる提灯のあかりに包まれると、じんわりと体と心が温かくなる。
そこには加納さんの優しさと、お客さんのへの熱い想いがあるからなのです。

Episode5
あとがき

 提灯が出来上がっていくのを間近に見ることができる店内。提灯造りでしか使わない道具がいくつもあり、どの工程もかぶりつきで見てしまいました。
現代の照明は、冬のイルミネーションや蛍光灯などのような人工的な光がほとんど。
明るいけど、なんだか冷たいような気がします。
一方らんたんやの店内は心が落ち着くだいだい色。
外を歩く人は、たちまちその光に吸い込まれて店内へ。
帰りに、小さな提灯をお土産に持たせてくれた加納さん。家に飾ると美濃和紙を通して優しい光がこぼれ、眺めていると穏やかな気持ちになります。
小さな提灯からは、加納さんの大きなぬくもりと優しさが溢れています。

SHOP INFORMATION

店名

手造らんたんや

住所

〒501-3726 岐阜県美濃市加治屋町1968

電話

0575-35-1409

営業時間

10:00~大体17:00くらいまで

休業日

水曜日(祝日の場合、木曜日)、1・3・5週木曜日

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