地元の非日常

心をこめた手作りごはんで、食卓に『真のおいしさ』を

「今日はなんだかご飯作りたくないなあ。」

普段から頑張って料理を作っていると、そんな日もありますよね。その際には飲食店に行ったりお惣菜やお弁当を買っていったりすると思います。

お子さんのいる家庭ならば、出来れば安心できる食材で作った手作りの料理を食べさせてあげたい。

けれども、忙しい日常に追われるなか毎日料理するのも大変。

そんなジレンマは、子供を想うお母さんには切っても切り離せないものかもしれません。

そんな中、お母さんに代わって手作りの「おいしさ」と「安心」を提供できるお店があるとしたらどうでしょうか?

今回紹介するのは、豊橋市に根差し、地域の人に愛されるお店で作られたお惣菜のお店。

一つ一つ、安全へのこだわりを持って手作りされたお惣菜をお届けしています。

こだわりを象徴する、お母さんが作ってくれたお弁当のようなあたたかさを持つ優しい味付けの料理たち。

その魅力やお惣菜を作っている店主さんの人柄について、たっぷりお伝えしていきます。

想いの源泉は、受け継がれる「手作りのおいしさ」

梅田川がすぐ近くを流れる豊橋市植田町。オレンジ色の看板を目印に、英会話教室の前を通り過ぎてさらに奥へ進んだところにあるのが『カフェとお惣菜のお店 ふくぷく』です。

石畳の歩道の先にある、ステンドグラスがはめ込まれた茶色い木の扉を開きます。

扉の向こうには左手にはプリザーブドフラワーなどが並ぶ商品棚があり、右手がお店の入り口です。

(アンティーク風の建物をバックに存在感を放つかき氷の旗。)

歩を進めると清潔感のある白い壁と木の温かみが感じられる椅子が目に入ります。

(ドアと同じくステンドグラスがあしらわれた窓が美しいです。)

「いらっしゃいませ。」

エプロンと三角巾を身に着け、お客さまを笑顔で出迎えてくださるこちらの女性が店主の笹木さん。

休日のランチタイムに旦那さんがお手伝いに入ることもありますが、基本一人で料理から接客とお店を切り盛りしています。

そんな笹木さんの一日は当然ハード。

8時過ぎにお店についたら、時間がかかるメニューの仕込みを始めます。

9時半になったら売店へおにぎりなどを配送しに出かけ、帰ってきたら追加でご飯を炊いてお客さまが来店されるギリギリまで残りの仕込みを進めます。

11時の開店後はお客さまの接客と調理・配膳を同時並行でこなします。

客足が落ち着いた段階で無くなったスイーツを追加で作ったり、翌日以降の仕込みを進めたり……そんな一日を過ごしています。

「とても忙しそうですね。大変ではないですか?」

「一人でもなんとか回せているのでそこまで大変だとは思いません。一時期はパートさんを雇っていたのですが、パートさんと仲良くなるとなあなあな関係になってしまって。それなら全部一人でやろうって決めました。」

普段お客さまと親しげにお話している笹木さん。一緒に働く人に対してもその気さくさや明るさが発揮されるのでしょう。

しかし、店主として従業員を指導する時に友達のような関係だと気が引けてしまうのです。「人を使うのは難しい」と語る一方で、「それではお店のためにならない、だったら一人で全部やろう。」と決断する強さが垣間見えました。

一人で作っている理由は、笹木さんが「料理好き」ということも関係しています。

「幼少期から料理が好きでいつかカフェを開くのが夢で。料理が好きなのでお惣菜とかもいっぱい作ってしまうんですよね。」

趣味で食べ歩きをしている最中にもどんな材料が使われているのか考えてしまう笹木さん。たくさんの料理を作る日々が苦にならないのは、もはや職業病というくらい料理が好きでバイタリティーにあふれているからこそ。

並大抵でない料理への行動力は、『ふくぷく』の立ち上げのころから発揮されています。

長年フラワーアレンジメントの講師をしていた過去を持つ笹木さんですが、カフェの経営という夢を叶えるために複数のお店で飲食業を経験。

開業の資金作りのために並行して学童保育の指導員のお仕事もしたそう。

2年以上の実務経験という調理師の受験資格をクリアした後は1発合格で免許を取得。

そこからは物件探しの中で見つけたこの場所を内見させてほしいと大家さんに直談判し、建物に魅力を感じて即決、内部をリフォームする手配も超特急で進めました。

その結果、新型コロナウイルスの蔓延により建築資材が予定通りに届かない困難にも負けず、調理師合格からわずか10か月という期間で『ふくぷく』を開業させたのです。

石と木でできた特徴的な床は元のお店のものをそのまま活用した上で、木目調のインテリアを取り入れた温かみある雰囲気に生まれ変わりました。

お客さまにくつろいでいただける居心地のよいお店がコンセプトです。

開業日は2021年10月28日。当時は新型コロナウイルスが猛威を振るっており、開業から3か月はテイクアウトのみで営業していました。

その後ランチ営業を始めるも誰も利用者がいない日もありました。現在も日によってお店の忙しさにかなりばらつきがあります。

しかし、笹木さんは前向きです。

「あんまりどうにもならないことは考えすぎないようにしています。病んじゃいますから。」

大変だ、不安だ、といった感情に支配されず、ひたむきに今の自分にできることを精一杯やる。そんな姿勢を感じる一言です。

『ふくぷく』のお料理のおいしさとは?

ここからはそんな笹木さんが作る料理の魅力に迫っていきます。

昨今は多くのヘルシーさを売りにした飲食店がありますが、『ふくぷく』は特に健康と安全への意識が強いお店です。

店内にはこのように『ふくぷく』のこだわりが掲げられています。

(店内の壁面にも貼られているほか、メニュー表と共にお席にも置かれています。)

“添加物が多く脂っこく甘い、『脳が直感的においしいと感じるもの』ではなく、薄味だけれども身体に優しく安全な『身体がおいしいと感じるもの』。”

こちらが『ふくぷく』の定義するおいしさです。

その根源には笹木さんの「『ふくぷく』の食事を召し上がる皆様に素敵な未来を迎えてほしい。」という想いがあります。

私たちの身体は口から入ってくる食べ物で作られているため、その素となる食材の安全面にこだわっているのです。

具体的には野菜は国産の無農薬や減農薬のもののみを使用、ソーセージなどの加工肉も添加物がないものを選んでいます。調味料は瀬戸内海の塩を炒って使っているなど細部まで手を抜きません。

このような信念を持つに至った原体験は何なのでしょうか?

答えは、笹木さんのお母様が作ってくれていた食事です。手作りの料理がほとんどでどれも薄味が基本、そんな手作りの料理を食べて育った経験が、笹木さんの美味しさへの価値観、ひいては今の『ふくぷく』を育てました。

取材時間は16時で小腹が減ってくる時間。今回はお総菜の特集ですが、カフェメニューから「ふくぷく」のこだわりを感じてみることにしました。

まずは飲み物から、笹木さんが順番に席へと運んでくれます。

こちらは『豊橋のミルクで作ったおいしいカフェオレ』。驚きなのは一緒に添えられたガムシロップがサトウダイコンを煮出して作った自家製のものだということ。少し入れすぎても大丈夫、それくらい自然な甘さです。

『季節の自家製無農薬ハーブティー』は、透明なガラスポットに入れて提供されたものを自分で注ぐスタイル。砂時計がすべて落ちきったら飲み頃です。

優しいレモングラスの香りと心くすぐられる見た目に胸を躍らせていると、ケーキの準備もできたようです。

こちらは『Luxeをふんだんに使ったおいしいチーズケーキ』。

『Luxe』とは北海道産のクリームチーズのこと。少しお砂糖を控えめにすることで「チーズケーキは高カロリー」という常識を覆す、おいしさと低カロリーを両立した一品となっています。

本当に何個でも食べられそうな、なめらかで優しい甘みを楽しめます。

『ふわふわシフォンケーキ』はβグルカンが豊富な大麦粉と新鮮な卵で作られています。

素朴な味わいだからこそ、フルーツやクリームとの相性が抜群!食べ応えがしっかりあるので、ヘルシーと満足感の両立を叶えてくれます。

カフェメニューはかわいらしい盛り付けが醍醐味ですが、見た目だけではなくおいしさも追及しています。

ケーキに添えられたクリームを一口。

「このクリームおいしい!」

声が出るほどおいしさの理由は脂肪分が45%以上の純生クリームを使用しているから。植物油脂特有のベタっとした甘さはまるでないのに濃厚な味わいが楽しめます。

そして嚙んだ瞬間、口の中で甘みが弾けるシャインマスカット。

ケーキに添えられるフルーツは無農薬もしくは最低限の農薬で作られており、自然の恵みに感謝してしまうおいしさです!

おにぎり一つに込められた、あたたかさとやさしさ

 『ふくぷく』のお惣菜は、レジ横のテーブルに並べられているものが10種類ほどで、冷蔵ケースの中にもサラダやラぺ等の冷菜やスイーツがたくさん。

(冷菜は日によって品ぞろえが変わることも。画像下段の手作りジャムは根強いファンがいる人気の品です。)

(一つ一つポップの説明を読んでいるとどれも食べたくなってしまいますよね!)

最近のおすすめ商品である9枡弁当は、いろんな種類のおかずが少しずつ食べられることから女性人気が高い一品です。使用している食材は基本変わりませんが、毎日違ったメニューを日替わりで楽しめます。

そんな中、目に留まったのは『ふっくら愛情おにぎり』。鮭や昆布などお好みの具を選び、その場で握ってくれるおにぎりは、一個120円というリーズナブルさが魅力です。

少しゆるめに握ってある出来立てほかほかのおにぎりは、口の中でお米がほわっとほどけます。口の中いっぱいに広がるおいしさで心まで温まる、まさに愛情の味。

そして海苔は別添えで袋に入れた状態で渡してくださるので、食べる直前に巻くことで、ふわっとしたお米と対照的なパリパリ感を楽しめます。

「おにぎりの握り方は母にも褒められるんです。母は三角におにぎりを握れないんですけれど、私はなぜか幼少期のころから自然にできていて、驚かれていましたね。」

お母様のお墨付きである笹木さんのおにぎり、『ふくぷく』を訪れたならば必食です。

(レジからは厨房で料理をしている様子を見ることができます。お客さまに安心していただけるだけでなく、笹木さん本人もきれいにしようと気が引き締められて一石二鳥とのこと。)

手作りのおいしさと感謝の心が紡ぐ縁

最後に一つ質問をさせていただきました。

「お店を経営していてよかったな、と思うのはどのような時ですか?」

笹木さんは少し考えて、こうおっしゃいました。

「『おいしかった』という言葉はやっぱり一番うれしいです。」

料理をすることを心から愛し、どんな時も明るく前向きな笹木さん。

そんな笹木さんらしい答えでしたが、その後に続いた言葉は意外なものでした。

「あとは……懇意にしてくださるお客さまが、改善点を教えてくださったときが嬉しかったですね。」

その常連さんとの出会いを教えてくださいました。

「これ、缶に入っているミートソースじゃないですよね。」

お店の近所に引っ越してきたことを機に何度か来店していたその女性がお弁当に入っていたミートソースパスタを食べた際に、お弁当に入っているおかずの手作りと市販品の味の違いに気づいて笹木さんに尋ねたのです。

「料理についてはデザートまで全て手作りしています」と伝えたところ、そんなこだわりに魅力を感じ、多くて週に5回ほど来店してくださるようになったのです。

言葉遣いが丁寧など、笹木さんが密かに気遣っているポイントに気が付いて褒めてくださるのだそう。

しかし、ある時のこと。柔軟剤を使わずに洗ったおしぼりを出したときに、「少しにおうかもしれない。」と女性から指摘を受けました。

「どうでもいいと思っていたらわざわざ指摘したりしないですし、黙って次からお店に行かなくなるだけです。ですからとてもありがたいことだと思います。彼女はいつも思い付きの『○○してみれば?』といった言葉じゃなくて、的確なアドバイスをくれる方なので感謝しています。」

確かに、一度きりで終わる関係だったら少し気になったことがあってもわざわざ伝えるのは面倒だし気が引けるので、言葉を飲み込んでしまうかもしれません。

心から『ふくぷく』を思っているからこそできることです。

そんなこの女性、なんと『ふくぷく』のホームページやメニューのデザインを手掛けています。

(ラミネート加工が施されたメニュー。写真もおいしさがきちんと伝わるようにきれいに撮影しています。)

「前世で徳を積んだのかな?と思ってしまうくらい、彼女に出会えた私はとても恵まれていると思います。」

その女性のみならず、お店のコアなファンとしてリピートしてくださるお客さまが多いことは『ふくぷく』の一つの特徴です。

例えば毎週日曜日にパフェを召し上がる方や、毎日のようにお店に訪れてくださる方。

また、まだ夏も盛りの時期なのにクリスマスのチキンやおせちの予約をしてくださった方もいるそうです。

そんな『ふくぷく』のファンであるお客さまからの声が笹木さんの原動力となっています。

「何人かのお客さまから『これから長く続けてほしい』という言葉をいただけることが増えてきて。私自身も長く続けていくことが大事だと思っているので、とてもありがたいです。」

お客さまとのエピソードを話している笹木さんの口からは、「ありがたい」という感謝の言葉が多く出てきます。

そんな、お客さまへの感謝の気持ちに溢れた笹木さんのモチベーションもまた、お客さまからの感謝です。

「先日お客さまがメッセージを残してくださったんです。本当にうれしくて、涙が出そうでした。」

(オードブルを注文されたお客さまから後日頂いたお手紙)

その他にも、食器と一緒に一筆メモを置いて行ってくださったお客さまがいらっしゃったそう。そのメモはカウンターにおいてあるカレンダーの裏に貼って、いつでも見られる位置に貼って大切にとってあるのだといいます。

おいしい料理を通じて、笹木さんとお客さまがお互いに対して感謝の気持ちを持ちながらつながりあっているのです。

 そんな『ふくぷく』のおいしさの価値に影響を受けている存在が、お客さま以外にいらっしゃいます。一体誰なのでしょう。

そう、笹木さんの二人の娘さんです。

笹木さんのおいしいご飯を食べて育ったため、娘さんたちが料理を始めたのは一人暮らしを始めてからでした。

しかし、ごはんがおいしいことが当たり前の環境で育ったがゆえに、上のお子さんは「パスタの麺は絶対この店のもの」など料理に使う材料にもこだわりを持って自炊をしています。

笹木さんの血筋を感じるエピソードです。

下のお子さんは料理に関してはできる限りは作るというスタンス。しかしお菓子作りがとても好きで、マカロンやクッキーなどに関しては笹木さんをもしのぐ実力かもしれないとのこと。

お二人とも、インスタント食品はほぼ食べないことや、出されたご飯は残さず大切に食べることが習慣として身についています。

もし笹木さんの娘さんたちが親となったならば、きっとその子供たちにも受け継がれていくのでしょう。

『ふくぷく』が求める「身体がおいしいと感じる」という価値。そこに魅力を感じる人の輪は、笹木さんが料理を作り続ける限り広がっていきます。

笹木さんの料理を食べた人が、こうしたおいしさへの価値観をもってその日の食事を選ぶことで、家族や周りの人々にもいわゆる「おふくろの味」のように揺るがぬ価値基盤として浸透していくのです。

あなたも是非一度『ふくぷく』を訪れて、笹木さんのこだわりが詰まったおいしさを感じてみませんか?

SHOP INFO

店名「カフェとお総菜のお店 ふくぷく」
住所愛知県豊橋市植田町字法事堂117-1
電話番号070-8511-4823
SNShttps://www.instagram.com/fukupuku_obento/
定休日月曜日
営業時間11:00~18:00 ※なくなり次第閉店

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