本棚の本 2022.4月
日本はじっこ自滅旅 著/鴨志田穣
喧嘩して家を飛び出して、旅というよりはオトナの家出。大好きなお酒と地域のおいしいもの食べながら安宿で過ごし、居場所が見つからないよう転々と動き回る。種子島に漂着したとき、「これは旅なのか、逃亡なのか」と鴨志田さん本人が気づき、途中で吐血し禁酒しながらも家出を継続するもドクターストップ!家族といっしょに治療が始まる。
はじまりは軽快だった文面が、だんだんとページを進めていくと家に帰りたいのだろうなという気持ちが哀愁を漂わせながら感じるエッセイ。お酒をこれだけ飲んでたら、それはそれで恐ろしいなと感じつつも、こんな風に計画もせずにふらふらと日本各地を旅するのは羨ましい。やろうと思えばできるけれど、できない理由を並べている限りは羨ましい一言だ。
●本の情報…出版社:講談社文庫 発売年:2011年 ISBN:978-4-06-276871-9
極夜行 著/角幡唯介
“極夜”それは太陽が地平線の上まで昇ってこないことで起こる現象。太陽がない日々を過ごした後、光という太陽を見たときにどう思うのか知りたいという好奇心で旅を決意した角幡さん。そう、自分が経験したことのないことを成し遂げようという人の日記です。
デポ(荷物の一部をルートの途中に置いておくこと)を熊に襲撃されて食料難になり「もう無理かも」ということがあっても、狩りをして狐は味がしない、狼は美味しいなどそのときの状況を傍から見て楽しんでいるようにも感じる。衛星電話で家族とたわいない話をして寒さや過酷な状況を紛らわせるという近代的な一面もあり、極限で一緒にいる犬を食べなきゃならん…なんて切ない面も。
読み進めていくにつれて重たく、辛くなってくる内容なので心して手に取っていただきたい。
●本の情報 出版社:文芸春秋 発売年:2018年 ISBN:978-4-16-390798-7
希望の地図 著/重松清
3.11から半年後経った、とある少年が一歩踏み出しはじめる物語。主人公の光司は、父親の知り合いであるフリーライターの田村さんの紹介で震災ボランティアに参加。「夢は無意識のうちに持つものだけど、希望は、厳しい状況の中で、苦しみながら持つもの」なんだと聞いた光司は実は不登校だった。自分の問題から逃げているのではないか、と父親から厳しく言われるも、反対を押し切ってでも現地へ向かう。現地で出会う人たちはなぜ、みんなこんなに「なんとかしよう」と奮起しているのかという理由が知りたいからだ。中学生の光司が長い時間をかけて考えた、自分ができることは「忘れないでいること」。その意味は本の中で見つけてください。そして、希望の地図を読んで自身ができることは何か?今一度考えてみませんか。
●本の情報 出版社:幻冬舎 発売年:2012年 ISBN:978-4-344-02148-8