ソニーの自動車業界本格参入から分かるこれからの自動車

 2022年1月にアメリカで開催された世界最大規模のエレクトロニクス展示会「CES2022」。コロナウイルスの影響で出展を見送る企業が相次ぐ中、

一際存在感を放っていた企業がある。日本を代表するエレクトロニクス企業ソニーだ。

ソニーが世界の注目を集めた理由は皆さんもうご存知なのではないだろうか。

電気機器メーカーであるソニーが、ソニーモビリティという自動車会社の設立を明かしたからである。この発表は自動車ビジネスに携わる人にとって大きな関心ごととして取り上げられた一方、一般消費者の間ではどこか他人事のように扱われている節がある。

しかしながら、ソニーが本格的に自動車業界に参入すれば、一般消費者の車選びにとっても必ずや大きな変化をもたらすであろう。

そこで今回は、「ソニーモビリティの設立」と巷で話題のキーワード「CASE」の2つを

ポイントにして、今後の車選びの変化を占っていきたい。


ソニーモビリティは車を作るけど作らない!?ソニーの本当の狙いとは?

CES2022で新たに自動車会社ソニーモビリティの設立を発表し、自動車会社業界のへの本格的参入の検討を開始したがソニーだが、その場でこんな発言も行っている。

「我々が自動車の部品を作り組み立てることはない―――」

この一見不可解な発言の背景を探ることで、

ソニーの本当の狙いと今後の自動車の進化が見えてくる。

そのためにまずは、昨今自動車業界のトレンドを表した「CASE」についておさらいする必要がある。

CASEとは「C(コネクティッド)」「A(自動化)」「S(シェアリング)」「E(電動化)」

の4つのキーワードの頭文字である。

上記4つのキーワードはいずれも自動車業界各社が注力している分野だが、

しっかりとビジネスとして形になっているのは「E(電動化)」のみである。

電動化とはまさにガソリン車から電気自動車への移り変わりを表している。

テスラが巻き起こした電気自動車旋風は、欧米のガソリン車規制の後押しを受けてもはや

不可逆的なものになりつつある。

つまり、電気自動車が普及する可能性が高く、当たり前のように存在するビジネスになったのだ。

ただ、他の3分野はどうだろう?

かろうじて「S(シェアリング)」において様々な形でビジネスの芽がではじめているが、まだまだどのシェアリングサービスも一般消費者の生活に根付いているとは言えない。

「C(コネクティッド)」「A(自動化)」に関してはさらに未来の話という感じがする。

しかし実は、この「C(コネクティッド)」こそがソニーが狙っていく分野だと言われている。

そして冒頭お伝えした通り、ソニーがこのコネクティッド分野でビジネスを確立した時、

私たち消費者の車選びや運転体験が大きく変わると言われているのだ。

では具体的にはどのように変わることが予想されるのか。

ソニーがコネクティッド分野を狙う2つの理由から未来を考えてみよう。

理由①「ファブレス経営」が可能だから

理由の一つ目は「ファブレス経営」と呼ばれる経営方式が可能だからである。

ソニーモビリティにおける経営とは車作りそのものなので、ファブレス経営とは

ファブレス式の自動車開発と言い直すことができる。

ファブレスとは、製造業の企業が自社の工場を持たずに自社製品を製造する体制を指します。これが冒頭に紹介した、ソニーの「我々は自社で車を組み立てない。」

という発言につながる。

既にソニーが日本を代表する自動車メーカーであるホンダとの提携を発表したことからもわかるように、ソニーは自動車そのものを作るノウハウを持たずとも、外部に委託することで自動車を製造しようというわけなのだ。 では数万点の部品からなる自動車の組み立てを外部に委託したソニーが何を行うのか。

理由②「エレクトロニクス企業」としてのノウハウを活かせる分野だから

車の骨格を作れないソニーは自動車の製造においてどんな役割を担うつもりなのか。

ソニーは自社がエレクトロニクス分野で長年培ってきた「センサー」「音楽」などの技術力を用いて、車内をエンタメ空間へと変貌させる役割を担うではないかといわれている。

実際にソニーは「ウォークマン」で世の中の音楽体験を変えた実績がある。

そしてソニーは、開発する電気自動車にプレイステーションを搭載する可能性を示唆している。自宅にプレイステーションがあれば車内でプレイできる。これこそソニーが描く

「コネクティッド」なのかもしれない。

*ウォークマンとは

 1979年7月1日からソニーが販売しているポータブルオーディオプレイヤーシリーズ。

 音楽は大きな機械で再生して屋内で楽しむもの。という音楽体験を一変させ、いつでもどこでも楽しめるものとして音楽というエンタメに革命を起こした。


ソニーのような異業種の参入が消費者の車選びに与える影響とは?

ここまでソニーの電気自動車開発への本格参入の狙いを掘り下げてきたが、

ソニーのような異業種の参入によって私たちの運転体験や車選びにどんな影響をもたらすのか。

これは参入する企業の得意分野によって変わってくるであろう。

例えば皆さんはあのテスラが自らを「環境問題に取り組む企業」であると標榜してることはご存知だろうか。

このことはテスラが掲げるミッションにも現れている。

「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること」

このミッションには自動車という単語は登場しないのだ。

環境問題にメスを入れようとした時、最もインパクトが大きいのが自動車の排気ガスを無くすことという結論に至ったそうだ。

テスラという環境問題に取り組む異業種が参入し、電気自動車を普及させたことによって、欧米の自動車ユーザーの生活は一変した。

ガソリンスタンドに行かない毎日。

太陽光で作った電気を車に貯めて使う生活。

エンジン音のない車内空間でのストレスのない会話。

もちろんメリットだけではないであろうが、車が変わることで生活が一変したことに変わりはないだろう。

他にもあのAppleが「タイタン」というプロジェクトチームで自動車運転開発をすすめてるし、Googleも「Waymo」という会社を立ち上げて自動運転の実現競争に名乗りをあげている。これが実用可能な域に達すれば、人々は「どれだけ多くの区間で手放し運転ができるのか」「どれだけ自動運転中の事故が少ないか」という観点で車を選び始めるだろう。

今回取り上げたソニーが参入を検討している「コネクティッド」分野の進化はさらに実用化が近いと言えるだろう。

車内でオンラインゲームを行うことがスタンダードになった時、

若い世代は「Apexができるかどうか」で車を選ぶかもしれないし、

「BTSのコンサートが独占配信されるから」という理由で車を選ぶかもしれない。

つまり、燃費がいいとか悪いとか、馬力がすごいとか、これまでの「いい車」の指標は

崩れ去る可能性も考えられるだろう。

既存の自動車メーカーにとっては生き残りをかけて新たな戦略が必要とされる辛い転換期かもしれないが、私たちユーザーにとっては今より更にワクワクする運転体験が待っているかもしれない。

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