ステータス⇒デートカー⇒移動手段 クルマの認識はどう変わっていく?
「クルマ」と聞いて、何をイメージしますか?
お金がかかる? 燃費? 先進技術? そういったことをイメージする方もいるかと思います。
いずれも、「移動手段」としての意味合いが大きいですよね。
しかしながら、昔のクルマはステータスの象徴、デートの必需品と、単なる「移動手段」ではありませんでした。
「クルマ」というものの認識が、ここ数十年で大きく変わったことになります。
一体どうして、ここまで変わってしまったのか。
そして、この認識の変化が今後も起きるとすれば、これからの認識はどう変わっていくのか。
予想していきたいと思います。
クルマはそもそも「ステータス」だった
高度経済成長期、サラリーマンは終身雇用制のもと、社業の発展とともに出世の階段を上り、所得も増えていくのが当たり前とされていました。
そして所得が増えていくと共に、それに見合ったクルマに乗り越えていきます。
初めて買うのはダットサン乗用車かパブリカ、少し出世したらサニーかカローラ、課長・部長クラスでブルーバードかコロナ、役員になったらセドリックかクラウン。
このようにしてクルマは、次第に所有者のステータスを表現するアイテムの1つとなっていきました。
クルマはデートの必需品
1980年後半から1990年前半にかけ、日本は「バブル景気」になっていました。
女性の社会進出が盛んに行われたことにより、女性の発言力が相対的に強くなった時期でもあります。
この頃の男性は、女性を取り合う熾烈な争奪戦が繰り広げられており、ご飯を奢る「メッシ―君」、プレゼントを贈る「ミツグ君」といったように、少しでも女性に近づく機会を狙っていました。
その中でも、クルマが重要だったのは「アッシー君」。
文字通り、女性を送る足になる男性のことですね。
アッシー君からデート相手に昇格するためには、女性から選ばれるクルマに乗る必要があります。
そのため、他の男性よりもいいクルマに乗っていることが自分のアピールポイントとなり、クルマの購入は熾烈になっていったのでした。
この頃のクルマは、SUVや軽といったカテゴリのほかに、「デートカー」があるほど。
映画で人気になったトヨタ「セリカ」、デートにぴったりの機能性のあるホンダ「プレリュード」、スポーツカーとしても人気の高い日産「シルビア」が並びます。
バブル期におけるクルマは、移動手段以上に重要な意味があったことが分かりますね。
このように、1970年~1990年前後にかけて、クルマはイケてる大人の相棒でした。
しかしながら、今のクルマにステータス、デートカーの意味合いはほとんどありません。
現在のクルマは「移動手段」としての認識がほとんどです。
では、クルマの認識が変わってきた要因はなんでしょうか。
クルマはどうして「移動手段」に?
大きな理由は二つ。
「バブルの崩壊」と「娯楽の増加」です。
- バブルの崩壊
ひとつはバブルの崩壊です。
バブルの崩壊による景気の悪化により、男性の収入が減少しデートにお金を払える余裕がなくなってきました。
同時期に制定された時間外労働の上限設定も大きく、24時間働き、余暇の時間で稼いだお金をデートに使うバブルの働き方は失われていきました。
競争力がなくなったことにより、カテゴリとしてのデートカーも次第に消えていき、クルマがステータスの文化もなくなっていきました。
さらには、バブル崩壊後に増加した非正規雇用も要因になります。
正社員に比べ低賃金の働き方が増えてきたことにより、クルマを持てなくなった層が出て来るように。
いずれにせよ、「ステータス」にお金を掛けられるほど金銭的に余裕がなくなったことが大きいですね。
- 娯楽の増加
もうひとつは娯楽の増加です。
バブル期の娯楽の多くは、クルマで出かけることが前提のものでした。
現在ほど価値観が多様化されておらず、メディアで取り上げられたスキーやディスコが人々の憧れとして、社会現象となりました。
百貨店に買いに出かけること、ひいてはドライブそのものが娯楽のひとつになっており、娯楽にクルマは外せないものになっていました。
けれどもバブル崩壊後は、インターネットの発達により、家に居ながらにして出来る娯楽が大量に増えてきました。
レンタルビデオ事業が業績を伸ばし始めたのもバブルが崩壊した1990年代後半からです。
ビデオ鑑賞、ネットショップ、オンラインゲームなど、クルマを必要としない娯楽の増加により、クルマは次第に必須なものではなくなっていきました。
このように、「ステータスの喪失」と「娯楽の増加」により、クルマにあった付加価値がなくなり、本来の目的である移動手段の役割が残りました。
現在では、借りたい時だけクルマを利用するカーシェアリングや、車両代や税金をひとまとめにし、定額で使用するサブスクリプションなど、クルマを「所有」しない形での「利用」も増えつつあります。
では、バブル⇒現在のように、現在⇒未来を比較した際にクルマの認識に変化はあるのでしょうか。
未来の自動車の形とは
自動車業界のトレンドを表した「CASE」という言葉はご存知でしょうか。
CASEとは「C(コネクティッド)」「A(自動化)」「S(シェアリング)」「E(電動化)」
の4つを表します。
ここで注目してほしいのはA(自動化)とC(コネクティッド)。
未来ではついに、クルマの根本ともいえる「自分で操縦する」というところすら不要になるかもしれません。
タクシーのようにスマホでクルマを呼び、目的地をセットし、自分は後部座席に座る。
そんな未来が描かれています。
そして、クルマがインターネットでつながることにより、自分が知りえない寄り道の提案を受けるかもしれません。
クルマにいながら、オンラインゲームを楽しめる可能性も。
そうした場合、「クルマ」という持ち物はもはや「移動手段」では無くなってきます。
操縦するというクルマの要素がどんどん小さくなってきて、代わりにインターネットで繋がる要素が増えてくる。
未来のクルマの立ち位置は、「移動するデバイス」のようなポジションになるのではないでしょうか。
その場合、スマホを数年で買い替えるように、コンピュータの進歩に合わせてクルマを乗り替える必要が出て来るかもしれません。
クルマの部品というハードウェアでのタイミングではなく、ソフトウェアでの購入タイミングが訪れるようになるかもしれません。
そうなれば、クルマを所有せず、数年でクルマを乗り替える乗り方はますます増えていきそうですね。
これまでのように、現金で乗りつぶす買い方はほとんどなくなっていきそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今我々の身近な移動手段であるクルマですが、過去にはクルマを持っていること自体がステータスだった時代がありました。
当時のデートカーのように、クルマの使い方や認識が変わればクルマの価値も変わっていきます。
ここまで大きな問題ではなくても、電気自動車への移行やモデルチェンジなど、クルマの価値が変わることは頻繁に起こりえます。
せっかくお金を貯めてクルマを買ったのに、知らないうちにモデルチェンジによって下取価格が激減してた……
なんてことがあれば、新車を購入する際に余計なお金を払わなければならないかも。
クルマの流行に乗り遅れないよう、今のクルマの価格がどれぐらいなのか把握しておくのも手ですよ。
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