美濃和紙特集

仐日和の商品を手に取ることができるお店 長良川てしごと町家CASA 河合 幹子さん

岐阜県で生まれ育った岐阜和傘職人。新しい和傘を生み出す仐(かさ)日和店主。

岐阜の伝統工芸品、岐阜和傘の魅力に迫ります。

Episode1

岐阜の伝統工芸品、岐阜和傘。

 傘布には薄くて丈夫な美濃和紙が使われています。岐阜和傘は江戸時代末期、年間52万本を生産。最盛期は海外へも出荷していました。現在、日本で作られる和傘の約9割は、この岐阜で生まれています。

長良川てしごと町屋CASAがオープンしたのは、2018年5月。
岐阜の伝統工芸品とその歴史に触れることができる。入り口をくぐって出迎えてくれるのは、河合幹子さんが1本1本心を込めて作った傘。河合さんは誰からも愛される魅力的な和傘を作っている職人です。

 子供の頃の週末は、祖母の傘屋が遊び場。母も傘屋の手伝いをしていたこともあり、将来は和傘職人になるんだろうなと何となく思っていました。
「傘作りは楽しそうだなと感じていましたね」。
活発に外で遊ぶこともあり、落ち着いて絵を描くこともあり。
「小学生の頃は放課に男子とサッカーしていましたね」。
部活が忙しくなるとなかなか祖母の家に行けず、次第に和傘から離れることに。
大学生を卒業後、企業へ就職しました。
「就活の波に飲まれまれましたね~」。
就職活動の波、分かります。と思わず相づち。
その後、叔父に誘われ和傘職人の道へ。
何となく抱いた将来像、和傘職人が現実になりました。

デザインのヒントは意外にも昔の資料から。
「知られていないだけで、昔はもっとたくさんの職人がいた分、たくさんの柄がありましたよ」。
町中で色々な柄の和傘が差される様子を思い浮かべてうっとり。
和傘作りには欠かせない道具の中にはもう売っていないものもあり、無くなってしまったら手作りするしかない。
「祖母から受け継いだ柄と道具がありますので、恵まれているなと思いますね」。
和傘作りを幼い頃から見て知っていたこともあり、0からのスタートではありませんでした。
まさに百聞は一見にしかず。

Episode2

責任を持って1本を仕上げる。

日本の工芸品の中でも複雑な工程が多い和傘。分業で作ることがほとんど。
 傘の骨を、1本の竹から数十本に削り出す「骨師」。シワにならないように和紙を張る「張り師」。和紙に油を塗り、雨漏りを防ぐ「仕上げ師」。各行程に専門の職人がいるほどです。
河合さんは一部を除き、全ての工程を1人で行っています。
月に作ることができる傘は、15本ほどです。
きっと猫の手も借りたくなるに違いありません。
分業にしてしまうと、傘作りの全体の流れを把握することができない。
「私自身まだまだ技量が足りないこともありますが、まずは1人で作れるようになって、傘作りを教えられるようにしたいです」。
和傘作りを次の世代へ繋げるため。そして外注している工程以外は、責任を持って仕上げるため。
「今の目標は、月に作れる本数を増やしてより多くのお客さんが手にとってくれるようにすることです」。
決して妥協はしない。和傘への強い想いが表れています。

大学生の頃のアルバイト先は、フルサービスのガソリンスタンド!
「入ってきた車を見て、どちら側に給油口があるか、すかさず識別していました」。
まさかそんな力仕事をしていたなんて、想像し難い。
「夜は車のライトの形を見て車種を当てる“ヘッドライトクイズ”をしていましたね」。
学生時代の河合さんにもお会いしてみたかった・・・。
大学1年生の時に乗っていた車を思い出し、“懐かしいな”の言葉がぽろり。
 バイトを通して車が好きに。和傘職人でなければ車のデザインを考えるか、グラフィックデザイナーになりたかった。
きっと和傘でなくても、お客さんに求められる新しいデザインに挑戦する姿勢は変わらないんだと感じました。

 40代の男性が6割。意外にも女性より、男性のお客さんが多い。
何度も長良川てしごと町屋CASAの店長との綿密な打ち合わせが行われます。
「店長からは人気がある柄・色を聞いたり、お客さんの生の声を聞いたりしています」。
今でも和傘は、昔の値段のまま売られていることが多く、職人が苦しい思いをしています。
 これからは、若い時代が職人業を引っ張っていかなければならない。
「打ち合わせを通して、ニーズに合った傘を、高品質で届けられる環境を整えることができると思っています」。
時代に応じて変えていかなければいけないのは、デザインだけではありません。
「就職活動をするような感覚で和傘職人を選択できるようにしたいです」。

Episode3

和傘には、野点傘・番傘・蛇目傘・舞踊傘などの種類がある。

野点(のだて)傘・・・屋外で茶会を行う時に使われた傘。
番傘・・・和紙を貼り、柄には竹が使われている傘。紛失を防ぐため、家紋や番号を入れた。
蛇目傘・・・番傘と同じく江戸時代から広く用いられた。蛇の目模様をあしらった雨傘
舞踊傘・・・日本舞踊の稽古傘だが、日傘やインテリアとしても用いられる。
和傘は、工程が100以上ある日本の伝統工芸品。構造が複雑のため熟練された技術が必要。

Episode5

和を活かしつつ、popな傘を目指す。

時にはファッション雑誌を見て、流行を研究しています。
「こってりした和のデザインも素敵だけど、洋服にも合わせやすく若い人にも手にとってもらいやすい和傘も作りたいです」。
雨傘の他にも、手入れが比較的簡単な日傘も作っています。
「和装で結婚式を挙げる人が減っていますが、結婚式の前取りや七五三の撮影など、幅広い場面で楽しんでほしい。使い方は人それぞれ!」。
1本の和傘を作るには、想像が付かないほど細かい作業と、難しい工程があるに違いありません。
それでも作り続けられるのは傘を広げた時、“きれいだね”と言い、買ってくれるお客さんがいるから。
岐阜和傘を知らない・見たことがない人に気軽に手にとって欲しい。
河合さんがデザインするのは、お客さんの笑顔そのものです。

Episode6

あとがき

雨の日には心が躍る。そんな傘に出会うことができる。
まさに童謡にある“蛇の目でお迎え嬉しいな”の歌詞そのままです。
長良川沿いの湊町。河合さんの和傘を取り扱っている長良川てしごと町屋CASAでは、和傘以外にも、岐阜の伝統工芸品とその歴史に出会うことができます。
敷居が高いと思っていた和傘。店内にいたお客さんからは“和傘じゃないみたいなデザインで素敵”と驚きの声が。
どこでも洋傘を買うことができる時代。それでも複雑な工程がいくつもある和傘が愛されてきたのは、職人の和傘への情熱がこもっているから。
河合さんが作る和傘は冷たい雨、強い日差しから守ってくれるだけで無く、鮮やかな大輪の花が咲いたように生活を明るく彩ってくれます。


SHOP INFORMATION

店名仐日和の商品を手に取ることができるお店 長良川てしごと町家CASA
住所〒500-8009 岐阜県岐阜市湊町29
電話090-8335-9759
営業時間11:00~18:00
休業日火曜日・水曜日

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