山田珈琲 山田 英二さん
山田 英二さん(48歳)
・スペシャルティコーヒー豆専門店(販売のみ)の「山田珈琲」の代表。創業20年。
・2004年、イタリア・トリエステで開催のコーヒー職人の世界大会「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」において“日本人初のWBC国際審査員”となる。以降、国際的なコーヒー品質基準の審査員などを歴任。世界各地の高品質なコーヒーの紹介に精力を傾ける
究極の本物を知ってしまった以上、素晴らしさを是非紹介したい。
珈琲界の次代を切り拓くカリスマが提案する“スペシャルティコーヒー”とは !?
Episode1
“コーヒー”が天職になってしまったきっかけは?
東京にいた19歳の頃、遊び過ぎて終電を逃して親しい先輩の部屋に泊まったことがありました。翌朝「ガリガリ、ガリガリ」という音で目覚めると、なんともいえない香味ばしい香りが部屋に漂ってきました。先輩が僕のためにコーヒーを立ててくれていたのです。無味無臭だった部屋にパッとコーヒーの香りが色を付けてくれました。飲み物で人の心に届くコーヒーにとても驚いた!(人の心に届く飲み物はコーヒーかお酒だけかもとフト考えてしまった)
この時の衝撃がコーヒーに気が向いた原点です。
サラリーマン時代にもコーヒー好きが高じて、商談以外でも喫茶店に居る時間が増え、気付いたら一日の半分を過ごすように。これはいかん、と後先考えずに退職しました。その後、山手線圏内のコーヒーの名だたるお店を全て踏破して勉強しつつ、とある喫茶店で焙煎職人の見習いの仕事を見つけたのがスタートです。
Episode2
いつから岐阜にお店を構えたんですか?
焙煎の見習いを始めて1年ちょっとの頃、岐阜に居る母が病に倒れ余命宣告を受けました。勤め先のオーナーに頼んで休みをもらって帰り、母の世話をしました。親孝行の真似事が出来、母は半年後に他界。さぁどうしよう!?そうだ、岐阜で喫茶店を開業するか!と決断しました。
Episode3
今の豆売り専門店ではなく、喫茶店としてスタートされたんですか!?
20年前は喫茶店ブームの最後の余波もあり「自家焙煎」の喫茶店を開きました。ところが喫茶店を利用するお客様の世代交代も進んで小さな頃覚えていたいわゆる喫茶イメージとだんだん変わりつつあった端境期。商売の行き詰まりを感じて、豆売りの物販を「併合店」として試してみることに。ある時、喫茶店を閉めて3日限りの豆半額セールをやったら750名ものお客様がご来店してくださった。岐阜は喫茶が盛んで、家庭では余りコーヒー飲まない先入観があったのでびっくり!家でコーヒー飲む人がこんなに沢山居る!豆売りなら生き残っていける、と直感しました。
Episode4
その後、どんな経緯で「スペシャルティコーヒー」の世界に踏み入れたのですか?
喫茶を止め完全に豆売り物販に切り替えた頃、コーヒーの良し悪し、美味しさ、品質について人から聞かれてちゃんと答えられない自分を知りました。プロでありながらプロじゃない自分を。同じ悩みを持つ同業者14~15人とネットで知り合い勉強会を始めてみた。テーマは「本当に品質が良いとは、どう見分けるのか」。研究していく中で分かったことは、欧米にはワインのテイスティングのようにコーヒーの品質を見分ける方法があるらしい、ということ。
「スペシャルティコーヒー」とは品質そのものがある一定以上のコーヒーを指しますが、「ブルマン」といった銘柄名や○○農園といった生産者名や、希少な○○といった形容詞・・・等々の「名」ではなく、美味しいという品質の「実」だけでふるい分けられるコーヒーの事を指します。
そのような「スペシャルティコーヒー」やその見分け方の情報が欧米の展示会に行けば知ることが出来る!と判明。私も含めて仲間皆、お金を工面して参加したのが最初の出会いです。
Episode5
その後、どんな展開となっていったんですか?
アメリカの展示会に参加し、ブラジル主催のパーティーに参加してみた。なんとコーヒー界のアイドルが沢山居る!スターバックスがモデルにしたお店の創始者ジョージ・ハウエルを始めキラ星の如く・・・彼らの話を注意深く聞いていると「最高級の品質のコーヒー豆が、彼らの限られたコミュニティーの中だけで流通している」ことが分かり、愕然としました。これじゃあ、何やっても最高品質にはたどり着けない、と。
色々思案し、まずはと始めたのが「味覚評価基準を勉強し、極める。それをもとに独自に仕入を産地に直接交渉する」というテーマでの仲間との勉強会。世界各国の産地・農園に直接出向き、一杯一杯試飲をして確かめながら、何年もかけて直接仕入れる契約先を増やしてきた。
Episode6
「最高品質」とはどんな品質なのですか?
「スペシャルティコーヒー」の3大原則は、①カップクオリティ=コーヒーの品質を見抜く力、②トレーサビリティ=追跡調査が可能なコーヒーであること、③サステナビリティ=継続可能なコーヒーであること、です。
①については「カッピング」というワインのソムリエのような技術を磨いてきた。②は例えば「今年の出来が去年より格段に良かったけど何か変えた!?」と聞いたら「肥料の種類と蒔く時期を変えた」と返事が明確に来ること。品質改良のヒントを把握できること。③はいい品質の豆を継続的に生産する為に、農地の環境を保護したり、農園で働く人々の雇用改善をする為の支援を行う事。②③は農園と直接やりとりしていないと出来ないことです。この①~③を実行していくことで農園との信頼関係のもと、高品質コーヒーを取引していただけるようになっていきました。
Episode7
どういうことですか?
コーヒーって同じ農園なら品質は全て同じという訳ではないのです。標高や農園の区画のコンディションによっても上から下まで品質ランクが分かれます。でもその違いを明確に目利きして、確かなものを仕入れることは、ほぼ不可能です。中間業者を介して仕入れている限り、仕入の中身が明らかにならなかったため、直接取引を模索するようになりました。
一方、農園も世界中から「最高品質を!」と求められる訳ですから、豆のクオリティを見極める力があり、かつ品質改善の提案や農園の経営環境の支援ができる、付加価値の高いパートナーから優先的にいい豆を譲り渡すんです。商売の売買関係の“当たり前”をお互いWinWinでやれる相手探しがカギを握る。
そういった概念と中身について、私たちがスペシャルティコーヒーに足を踏み入れるまで、日本ではほとんど知られていませんでした。
Episode8
山田さんが歩んできた道について、簡単にまとめてください(笑)
どうせなら、お客様から喜ばれてお店を発展させたいと思ってやってきました。その途上で「いいもの(いいコーヒー)がどんなものか、純粋に知りたかった」のが私の歩みの原点です。「いいもの(いいコーヒー)は美味しい。スーッと体に入っていく」スペシャルティコーヒーを知って、核心を掴んでしまいました!だから、知ってしまった以上、素晴らしさを是非、お客様に紹介したい、というのが私の働く動機です。スペシャルティコーヒーは新しいマーケットで、毎年毎年イノベーションが生まれていきます。まだ始まったばかりのカテゴリの魅力を人々に分かり易く、魅惑的に伝えていきたいです。
Episode9
山田珈琲の特長と岐阜の珈琲文化の可能性について最後に教えてください
この5月に「滞在型コーヒー専門店」へとお店を改装しました。世代を問わずお家でくつろぎたい時にひと手間かけたくなる代表例がコーヒーです。空間の中にコーヒーがあるとパッと締まる。特にその人が持っている時間がキュッと締まる。コーヒーはメインじゃなく、生活の中でのなくてはならないスーパーサブ!
そんなシチュエーションをまるで自宅で飲むように疑似体験できる販売空間を作りました。日替わりで3種類の試飲をご用意しておりますし、インテリアにもこだわりました。
私たちのように、コンセプトとテーマを絞った個性を追求する「専門的なコーヒー店」が岐阜には増えつつあるような気がしています。モーニングに代表される「何でもある喫茶店」が減り、個性豊かな専門店が増え、それぞれ競い合っていき始めているのが岐阜という街の不思議な魅力だと思います。
人口減の時代の地域活性化のユニークなモデルになり得る可能性を岐阜は持っているのではないでしょうか。
SHOP INFORMATION
店名 | 山田珈琲 |
住所 | 〒502-0813 岐阜県岐阜市福光東1-25-3 |
電話 | 0120-729-501 |
営業時間 | 10:00~19:00 |
休業日 | 毎週火・水曜日 |
その他 | 駐車場有り(5台) |