プティ・ミュゼ シェ・ドーム 片桐 弘二さん
片桐 弘二さん(67歳)
・岐阜市出身、公務員をしながら20年かけて「天井フレスコ画とアンティークにちりばめられた」シェ・ドームを開業。
マスターは人見知りの繊細な乙女キャラ。
常連以外はカウンターを避けがちだけど、互いの接点が見つかると百年の知己同様。初めはとっつきにくいけど、通い続けたくなる温かさが魅力。
Episode1
“喫茶”が天職になってしまったきっかけは?
なぜ喫茶が好きか?なんて難しい理屈は無いわよ。おぎゃー、と生まれた時からいつかこの商売やると思ってた。新卒で公務員勤めをしながら20年経って、お店を開いた。もともと歴史が好き、宗教画が好き、ヨーロッパのアンティークが好きだったのが高じて、お店を始めました。店名の「プティ・ミュゼ」の意味は“小さな美術館”。「シェ・ドーム」はフランスのガラス工芸家・ドーム兄弟が由来。
「デ・ジャブ=既視感」って知ってる?ヨーロッパに初めて行った時、この世界観は前世から知ってる心地よさを感じたわ。世の中、理屈で考える人が多いけど、理屈で割り切れないこと沢山ない!?
なぜ“喫茶”を始めたなんて理由は分からない。理屈なんて無いわよ。
Episode2
飲み物やスイーツのこだわりを教えてください。
珈琲は天日で豆を干して成分がよく抽出できる“オールドビーンズ”を使い、「深煎り」にしてます。有機栽培コーヒーとか流行ってるようだけど、本当に美味しいの?チェーン店も湯に色を付けた感じがする。香りはあるけど、味は感じない。鼻つまんで飲んだらどこの珈琲ってホントに分かる!?うちの「濃過ぎる」珈琲は、濃いけどさっぱり、苦くない。水色がピュアで少量カップ、スッと飲めるのが売り。
スイーツも人気あるけど、迎合してないわよ。季節や旬を大切にしてます。いちごが無い時期にショートケーキは作らない。秋口ならいちじく、巨峰、桃でケーキを作る。定番のミルフィーユだって、常にいちごじゃなく、旬の果物で作るオリジナルがいいとこだと思う。自然に反する事はしないの。旬のもので作るのは素材が腐りづらいことは勿論、季節季節のものをいただくことで生活感や彩りを感じるじゃない。ケーキを通じてそんな豊かな気持ちを味わえた方がきっと楽しいと思うわよ。
あと、質を落とさないということにこだわってます。よく生クリームを使う時、動物性クリームと植物性クリームを混ぜるお店が多いの。植物性を混ぜると日持ちが延び、コストが下がる。植物性クリームは融点(口どけ温度)が高いから、食べた瞬間はクリームの食感にボリューム感があって美味しいと感じるけど、飲み込んだ後に喉で溶け始めるから胸焼けしがち。そういう小手先の儲け主義はやらないから、動物性クリームだけでやってます。オールドビーンズの濃厚珈琲にまぜてもほんと美味しいわよ。変に混ぜものしない、というのが珈琲もスイーツも長年支持される理由かも。
Episode3
飲食以外にお店のこだわりはございますか?
アンティークのインテリアや食器にこだわっているのと、天井のフレスコ画です。フレスコ画を描く為にわざわざ漆喰の壁を作りました。ヨーロッパの宗教画のようなフレスコ画を描ける画家を捜すのに意外と苦労して、10年もかかりました。ディズニーシーとか描いた本職の画家だからいい絵だとは思います。
アンティークは「前の世代の大切なモノを預かり、次の世代に渡す」という感覚。一つ一つのモノを大切にして使い続けるという考えがしっくりくるの。
Episode4
常連さんが多そうなお店ですね!?
そうとも言えるけど、スマホ時代、ひょんなことからお店を訪ねてくださる新しいお客様も増えてるわ。ただ、私は結構人見知り。知らないヒトが入ってくると、カウンター空いてるのに、ついつい奥のソファに案内してしまう(笑)
でもそれって敬遠してるわけじゃなく、どう接したらよいか探ってる訳。でもお客様もきっとそうでしょ!?カウンター許可すぐ出ない感じ悪いお店だけど(笑)、その辺りの不器用さがお客様との関係が長続きする理由かな。
よく、若い頃常連だった女性の娘さんがいらしてくれます。世代を継承した常連化。アンティークの譲り渡しと一緒かも(笑)そんなお客様に支持していただけ続けるのが嬉しいです。珈琲はあくまでも媒体であって、人と人とのコミュニケーションの通じ具合の本質はいつの時代でも変わらないわよ。
Episode5
最後に、岐阜の喫茶文化の魅力は何だと思いますか?
取り敢えず喫茶店行こうか!という文化がなかなか他県には無いと思います。繊維産業盛んなエリアの名残だとは思うけど、会社で話すよりまずは喫茶店に案内して商談しよう!が多かった地域(繊維の機織り機の音がうるさいから、会社ではまともに会話も出来ない)。そんな名残がまだまだ残っている珍しい地域が岐阜だと思います。
SHOP INFORMATION
店名 | プティ・ミュゼ シェ・ドーム |
住所 | 〒500-8174 岐阜県岐阜市栗矢田町2-1(溝旗公園東) |
電話 | 058-263-4132 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
休業日 | 年中無休 (不定期に休むこと有、事前問合せが望ましい) |
その他 | 駐車場有り(4台~お店の南側C、D、E、F) |