地元の非日常

世界を変える小さな出会いから、イロトリドリな新生活のお手伝い

「今日は週末!気分転換にどこかにお出かけしたい……。」と思っているそこのあなた、お出かけ先に困ってはいませんか?

すぐには思いつかなくてとりあえずショッピングモールに行ってみたけれどなんか飽きてきちゃったなあ、なんてことはありませんか?

長期休みがきた、子育てがひと段落して時間ができた、仕事をやめた……そんな理由で時間に余裕がある人は特にそう感じているかもしれません。

せっかくなら、何か目新しい体験をしてみたい!

そんなあなたに本日紹介するのは、鳥をはじめとした小動物と触れ合えるお店です。動物との触れ合いに新鮮な癒しを感じるだけではなく、気に入った動物の購入やアフターケアまでサポートしてくれます。

もしも我が家に動物がやってきたらどんな生活になるんだろう?

ぜひ自分ごととして想像しながら、お店を通じて生まれる出会いの物語をお楽しみください。

扉の奥は、まさに鳥たちのユートピア!? 

ガラス製の引き戸を開けて、カーテンの奥へと脚を踏み入れた瞬間。私たちを包み込む鳥たちの元気な鳴き声。

ピ!ピィピィ!チッ、チチッ!ギャギャギャギャ!

(ケージが多く並ぶ店内に鳥たちが放されている店内。ガラスで仕切られた奥の部屋にも多数の鳥がいます。)

緑や水色など色鮮やかなインコや文鳥十数匹が、せわしなく視界を飛び交う光景に目を奪われていると、何かコツコツと叩かれるような感覚。

驚いて目線を落とすと、「僕を見ろ!」と言いたげにアヒルが靴をくちばしで突いています。

そう、上空だけではなく足元にもご注意を。世界最小のニワトリの雛や二匹のミニウサギが近くにいるかもしれません。

するとその時、鼓膜を震わす一つの音が部屋に響きます。

コッケコッコー!

ガラスを隔てた向こう側から聞こえたのは、朝の訪れを告げる少し低めの鳴き声です。

スッと頭を持ち上げ、天を仰ぎながら高らかに鳴くニワトリの姿にはどこか高貴さを感じます。

(肉垂というくちばしの下の赤い部分を恐る恐る触ると……生ハムのような、形容しがたい柔らかい感覚が。)

ここは『バードカフェ 小哲の部屋』。豊橋市三ノ輪町の幹線道路沿いに佇む、東三河唯一の鳥と触れ合えるお店です。

(『小哲の部屋』の外観。屋号である『小哲』は看板バードの鷹のお名前です。)

文鳥やインコといった馴染みのある鳥からタカやフクロウといった猛禽類、モモンガやハムスター、ウサギなどの小動物まで、多様な種類の動物と一気に触れ合えることが最大の魅力。

原則フリータイムで、思う存分動物との交流を楽しむことができます。

種としての生態だけでなくその仔自身の性格・生い立ちなども教えていただけるので、全く触れたことのない動物であっても安心。

そして、触れ合いを通じて気に入った動物は購入してお迎えすることができるという特色があります。

(インコが手の上にも頭の上にも!)

『小哲の部屋』のオープンは2017年9月。店主の浪崎さんは午前中に看護師として働き、午後13時から18時30分までお店を一人で切り盛りしています。

定休日はなく、浪崎さんが講演やイベントに出演される際にはお店を閉めるというスタイル。

動物の世話には休みがないので、高熱を出した日もお店に行って動物たちに餌をあげる生活を送っています。

(タカがプリントされたTシャツを身につけ、明るい笑顔を見せる浪崎さん。動物のグッズはつい集めてしまうのだとか。)

子どもの頃から動物に囲まれていることが当たり前の環境で育った浪崎さん。

動物好きのお父様のもとで飼われていた動物は、イヌやネコに留まらず、シマリス、ガチョウ、ニワトリ、なんとピラニアまでいたとか。

(小哲の部屋にいるシマリス。浪崎さんが小学生の頃はランドセルを置いたらシマリスを連れて遊びに行っていたとのこと。)

浪崎さんが自身の生育環境の特殊さに気づくのはもうしばらく後のこと。

動物を飼うハードルが低いまま大人になった浪崎さんは、思い立って鷹を飼い始めます。

その際に周囲から予想外の反応を受けたことから、ようやく『あれ?もしかして普通じゃないの?』と気づきました。

(看板バード・小哲くんの凛々しいまなざし)

そんな浪崎さんは、お子さんが成長して手を離れたことをきっかけにずっと続けていた看護師以外のキャリアとして起業を決意。

「自分にしかできないものって何だろう?」と考え、たどり着いた答えは動物との関わり。

当たり前のように多くの動物と共に過ごす日々は、ほとんどの人にとっては特別な環境です。

「動物は好きだけど飼えない、興味があっても育てる自信がない。」

そんな人々のニーズに応えるため、『小哲の部屋』を開業しました。

なお、バードカフェというお店の名前に反して現在はドリンクの提供は行っていません。

代わりにお客さんが持ち込んだものを店内で飲むことができます。

方針転換の理由は、動物が増えすぎてしまい、動物の飼育スペースと飲食スペースを完全に分けるという食品衛生法の基準を満たすことが難しくなったから。

「そもそもお客さんは触れ合いを求めてきているので、飲み物が手つかずのまま冷めてしまうなんてこともあって。」

そうした経緯から飲み物の提供をやめた分動物の数が増え、数多の動物が自由に飛び回る現在の姿になりました。

万人に平等な触れ合いを求めて。

 ここで、浪崎さんが私たちにある野菜を授けてくれました。

それは豆苗!手の中で可愛らしい緑の双葉が揺れています。

 自発的に頭や肩に止まって羽を休める子もいますが、やはりエサの力は強大そのもの。

「あ、豆苗があるぞ!」

そう気づいた鳥たちが我先にと飛んできて、手や腕にとまっては取り合うように豆苗を啄みます。

「あ、痛い痛い!それ食べ物じゃない!」

エサがなくなってしまって、私の腕をつつきだすのもご愛嬌。

(腕を止まり木にインコたちが大集合!)

「インコは豆苗の葉の部分が特に好きですね。茎が余ってしまったらウサギとかにあげたら食べますよ。」

床の上で思いっきり身体を伸ばしているミニウサギのハナコちゃん。お腹いっぱいなのか餌に興味を示しません。

(ハナコちゃんはレディなので、おしりを触っていたら怒ってしまいました。)

実際に触れ合ってみないとわからない、それぞれの動物との関わり方の違いを体感するのはワクワクします。

『小哲の部屋』のお客さんは、動物とのどんな関わりを求めてお店を訪れるのでしょうか?

例えば、動物全般が好きで、一つの種類の動物だけでなく様々な動物と触れ合いたい人が訪れています。

家で飼える動物の数や種類には限度がありますし、一般的な動物カフェでは特定の動物としか触れ合えません。

しかし、小哲の部屋ならば一度に多種多様な動物と触れ合えます。常連さんの中には、家事を済ませてから夕飯の時間まで入り浸って触れ合いを堪能する方もいるとか。

もちろん特定の動物をお目当てに訪れるお客さんも。

例えば、子どもの頃に買っていた文鳥とまた触れ合いたい、でも気軽に触れ合える場所がない……。そんな人が『小哲の部屋』の戸を叩いて、ペットと共に過ごした人生のひと時を懐かしむこともしばしば。

(文鳥のような小さな鳥は、羽に汚れが溜まっていて逃げ遅れたら命とり。そのため自ら定期的に水浴びをして羽を綺麗に保ちます。)

実際にこんなエピソードも。

『昔大好きだった鳥ともう一度触れ合いたい。』という願いを叶えるため、車いすに乗ったご老人がご家族に連れられてやってきました。

鳥の鳴き声と共に普段は閉じていることが多い目が開き、うれしそうに鳥との触れ合いを楽しまれたのだそう。

訪れる方は年齢や性別も様々で、身体的なハンディを抱えた方や外国の方もいます。

例えばあまり動物園を楽しむことができない盲目の方も、小哲の部屋でならば触れ合いを通じて鳴き声や動物のぬくもりを感じられます。

触れ合いというコミュニケーションは、どんな人にも平等に与えられているのです。

(ふわふわの毛を通じて手のひらに伝わるハムスターの体温。心地よさと共に、手の中に生命が委ねられている緊張感もあります。)

触れ合ってみて、初めて見えること。

種類だけではなく、雛から成体まで多岐にわたる動物たち。

今度は生まれたばかりの赤ちゃんを育てているモモンガの番を見せてもらうことに。

(巣にいるはずの赤ちゃんのお顔は見せてくれませんでした。夜行性だからまだ眠いみたいです。)

「そういえば、小哲の部屋の仔たちはどこからお迎えしているんですか?」

「このお店で生まれた仔もいますが、そのほかはブリーダーから買い付けています。独自のルートで、問屋を通さずに動物を仕入れられるんです。」

(小哲の部屋で生まれ、完全人工飼育で育てられたオキナインコ。閉じた硬い羽が徐々に開いて、ふわふわとした綿毛が顔を出しています。)

信頼関係のあるブリーダーと直接やり取りしているため、その仔がどんな親から生まれてきたのかまで知ることができるほか、病気などの欠陥がある動物を知らずに買ってしまうことを防ぐという利点があります。

しかし、前述の利点に反して小哲の部屋ではハンディを持つ動物を多数迎え入れています。

商品にならない動物は処分されてしまうため、「処分されるくらいならうちにおいで。」と引き取っているのです。

ちなみに『小哲の部屋』には多くの動物が部屋に放されているのに対し、一部の鳥はずっとケージの中にいます。

その理由は、脚や翼にハンディを抱えているから。例えば他の鳥にいじめられたときに、逃げる動作が遅れたら大怪我をしてしまう可能性があります。

ケージがそんな鳥たちを守っているのです。

「ケージの中からは出してあげられないけれど、みんな一生懸命生きています。子どもを産んで雛を育てた仔もいますよ。」

お話を聞くまでは何気なく見ていた、ケージの中の鳥たちの背景。実際に足を運ばなければ見えない裏側が見えました。

(ハンディを抱えた鳥たち。左下のインコは足が一本しかなく、木にとまることができないので箱の上に座っています。)

「当たり前」の変化に立ち会うお仕事。

小哲の部屋には動物をお迎えしたいお客さんも訪れます。ペットショップにはない価値を求めて、中には県外からはるばるやってくるお客さんも。

例えば、「生まれたての状態からどんどん成長していく過程を余すことなく見届けたい」と思い、生まれる前のまだお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの予約も可能です。

お客さんの要望にも柔軟に対応できることは『小哲の部屋』の魅力の一つです。

それだけではありません。『小哲の部屋』の真骨頂は、お客様の真の要望を叶える、綿密なコミュニケーションを重ねての提案です。

浪崎さんはお客さんの要望を叶えるべく、ライフスタイルや動物を飼いたいと思った理由について詳細にヒアリングを行います。一つ例を挙げましょう。

そのお客さんはハリネズミを目当てにご来店。しかし、詳しくお話をお聞きした結果、ふれあいが出来ず夜行性のハリネズミよりもデグーというネズミの仲間があっているのではないか、と考えました。

そのようにご提案したところ、お客さんもその仔を気に入ってくださってそのままお迎えが決まったとのこと。

また、もしその場で「飼いたい!」と気持ちが盛り上がってしまっても「家族で相談してからもう一度来てください」と伝えることを徹底しています。

そのため、衝動買いしたはいいけれど家族に要らないと言われた、という理由での返品トラブルはありません。

しかし例外もあります。シロハラインコのちゃこちゃんは、かつての飼い主さんに病気が発覚し、一緒に暮らすことが難しくなってしまったため小哲の部屋にきました。

普段、動物の引き取りなどは行っていないのですが、このようなやむを得ない事情がある場合に限り、再び『小哲の部屋』の仲間入りを果たすこともあるのです。

(「カワイイヨ」が口癖のちゃこちゃん。かつての飼い主さんにたくさん愛されてきた証拠です。)

小さな命が秘めた、大きな力

「浪崎さんがこの仕事をしていてよかったと思うのはどんな時ですか?」

「動物をお迎えされた方の人生が良い方向に変わった時です。」

『小哲の部屋』では動物がお迎えされて終わりではなく、アフターサポートも行っています。お店にエサを買いに来る人もいれば、いつもと動物の様子が違う際など気になることがあった時に相談しにくる人も。

そうしたお客さんとのコミュニケーションの中では、動物を迎えた後の日常生活の変化についても話題に上がります。

 これはとある男性の身に起こった変化です。インコをお迎えしたことをきっかけに、寂しさが理由で夜にお酒を飲みに出歩く習慣がなくなりました。

結果、お酒を飲む量が減ったことで肝臓の数値がみるみる改善。体調不良であまり働けなかった状況から一転し、「この仔のエサ代稼いでくるわ!」と元気に仕事ができるようになったのだとか。

この話を聞いて、「ここまで人生が好転しうるのか」と驚きが隠せませんでした。

「鳥たちにはもちろんそんなつもりがなくても、人生を変えるパワーがあるってすごいことですよね。」

嬉しそうに語る浪崎さん。

家族として愛情を注いでもらえる動物がいて、その動物からポジティブなエネルギーや癒しをもらえることで人生を好転させられる人がいる。

そんな風に、互いに影響を与え合って動物も飼い主も幸せな未来が叶えられるとしたら。

それ以上に理想的なことはないですよね。

非日常のイロドリを日常へ

今後、『小哲の部屋』はどんな広がりを見せていくのでしょうか。

「イベントや小学校に呼んでもらったりして、より多くの人に動物との触れ合いを届けていけたらと思います。例えばイベントをきっかけに、学校で動物を飼っていない子供たちが興味を持ってくれたらうれしいです。」

動物に触れた経験が少ない人々に、癒しや楽しさ、動物と共に生きていく可能性を見出してもらうこと。それが浪崎さんの叶えたい夢。

だからこそこれまで動物と縁のない生活を送っていた方に、一度『小哲の部屋』を訪れてみてほしいのです。

(動物には不慣れな筆者も触れ合いを存分に楽しめました!)

動物が好意的な反応を見せてくれた時のよろこびは、気が付けば触れ合いへの心理的なハードルをなくしてくれるはず。

そしてもしも、「この仔と家族になりたい。」という気持ちが芽生えたら。

これから始まる非日常が、動物たちにとってもあなたにとっても幸せなものとなるようにサポートしてくれる、そんな場所が『小哲の部屋』なのです。

せっかくのお休みの日。

『小哲の部屋』の扉を開けて非日常の第一歩を踏み出してみませんか?

SHOP INFO

店名バードカフェ『小哲の部屋』
住所〒440-0838 愛知県豊橋市三ノ輪町1丁目1−2
電話番号0532-39-5804
ホームページhttp://www.kotetsuroom.jp/
Twitterhttps://x.com/kote_room
Instagramhttps://www.instagram.com/kotetsunoheya/?hl=ja
Facebookhttps://www.facebook.com/kotetsunoheya/
営業時間午後13時〜18時半(最終入店)
休業日不定休(営業情報はSNSからご確認ください)

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